食物繊維は大切な栄養素です。
それはもう誰でもご存知の話です。でもひと昔まえまでは、「いらない成分」、「食べカス」などと呼ばれている時代もあったのです。
ここでは今では、「第6の栄養素」といわれるまでになった歴史と、最近ではオリゴ糖とともに「プレバイオティクス」とも呼ばれ、健康分野においてさらに注目を集めている、食物繊維の凄さを紹介していきます。
昔は期待されていなかった食物繊維!?
今でこそ、食物繊維は腸内環境を改善するために、なくてはならないような存在にまでのぼりつめていますが、栄養学的には昔から注目されていたわけではありません。
食べても吸収されずに排泄されていることから、「何の役にもたたない成分」とか、「食べ物のカス」とかいわれてもいたのです。
ところが、野菜などにふくまれる食物繊維は便秘予防に効果があるということは、じょじょに経験的に知られていくことになり、科学の進歩とともにどんどん食物繊維への関心は高まっていきます。
長寿地域で重宝されていた食物繊維
世界各地の長寿地域の食生活の研究をしていくなかで、健康な長寿者が多くいる国において食物繊維の多くふくまれている食べ物をよく食べているということがわかってきました。
その一方で、戦後の日本では食生活が豊かになったこともあり、平均寿命もどんどん伸びていったのですが、肥満とともに、ガンや生活習慣病などが増加したという現実もあります。
これは、戦後に広まったいわゆる欧米型の食生活の特徴として肉類を食べることが増えてしまったということが原因でもあります。
研究によって、肉類にはまったく繊維質がふくまれていないことにより、肉類を過剰摂取すると腸内腐敗をひきおこし、便秘になってしまうと考えられるようになってきたのです。
そして、食物繊維こそが、実は腸内環境において大切な存在だと認められるようになるのです。
その原因が、昔バカにされていた「体内に吸収されない成分」だという特徴だったのは皮肉なことですね。
この逆襲がはじまるのが、結局1960年以降になってきます。
そして今では、体内に消化されない成分でありながら、その働きの重要性が評価され、「第6の栄養素」とさえ言われるのようになっています。
大腸ガンとの仮説からはじまる
画期的だったのは、「食物繊維の摂取量が少ないと、大腸ガンの発症リスクが高くなる」という仮説でした。
これはイギリスのバーキット医師によるもので、当時大々的に注目されました。
バーキット博士は、アフリカに20年以上も住み込み、アフリカの人たちを治療してきました。
そこで気づいたのは、アフリカの農民は大腸がんなどの大腸の病気が極めて少ないことでした。
そこで、バーキット博士はアフリカの農民の排便量とイギリス人の学生の排便量、そして食べてから便となって排泄されるまでの時間(消化管通過時間)を測定してみました。
アフリカの農民の1日の排便量は平均470g、消化管通過時間は平均36時間だったのに対し、イギリス人の学生の1日の排便量は平均104g、消化管通過時間は平均73時間であることがわかりました。
消化管通過時間は、食べてから小腸を通過するまでは両者ともにほぼ同じでしたが、大腸に滞在している時間がまったく異なっていたのです。
イギリス人の学生は、アフリカの農民の約2倍にあたる73時間も便を大腸にためていました。(参照※1,2)
- Burkitt DP. "Related disease--related cause?" Lancet. 2(7632), 1969 Dec 6, pp1229-31.
- Burkitt DP. "Epidemiology of cancer of the colon and rectum" Cancer 28(1), 1971 Jul, pp3-13.
まだまだ面白いデータが、日本の腸内細菌の第一人者である光岡知足氏により行われています。
<欧米型のカナダ人と宮城県の農村在住の日本人との腸内環境の比較>
日本人の方にビフィズス菌が多く、カナダ人にはウェルシュ菌などの悪玉菌なども多く存在
<長寿地区として有名な山梨県上野原市と東京都の高齢者の比較>
ビフィズス菌が上野原市の方が多かった
上野原市の高齢者の食物摂取量28.8g(厚労省の定める目標摂取量男性20g、女性18g)
ここでも話題にしている青汁をガンガンとるしかねー!
腸内細菌クエストでオススメしている青汁は、KOWAの「黒糖抹茶青汁寒天ジュレ」です。
この青汁は、青汁による食物繊維だけでなく、乳酸菌も入ってるのダブルで便秘解消に役立ってくれます。
詳しくは、「腸内細菌クエストがオススメする乳酸菌入り青汁」の記事を参考にしてみてください。
健康になるための食事とは!?<世界編>
世界にも、上野原市のような長寿地区は存在しており、いろいろな学術的な調査を繰り返しています。
特に長寿であった、パキスタンのフンザ、エクアドルのビルカバンバ、グルジアのコーカサスには共通点があったのです。
それは、どの地区も野菜や果物が豊富な地域であり、肉類などの動物性タンパク質をあまり食事で食べないということです。
野菜や果物以外でも、穀類、豆類、イモ類、海藻などもよく食べており、どれも食物繊維が豊富にふくまれています。
日本も以前は、似たような食生活で動物性タンパク質も肉類ではなく、魚介類中心だったので、腸内環境が綺麗だったのでしょう。
しかし、これらの研究成果の一方で、世界全体をみわたすと、文明や経済の発展にともない、欧米型の食生活が流行してしまい、これらの長寿地区ですら、もはや長寿ではなくなりつつあるというデータもあるようです。
健康的な生活をしていくためには、しっかりと食物繊維を摂取して、腸内環境を整えていけるようにしましょう。